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康文君

 ごめんなさいね おかあさん
 ごめんなさいね おかあさん
 ぼくが生まれて ごめんなさい
 ぼくを背負う かあさんの
 細いうなじに ぼくはいう
 ぼくさえ 生まれなかったら
 かあさんの しらがもなかったろうね
 大きくなった このぼくを
 背負って歩く 悲しさも
 「かたわな子だね」とふりかえる
 つめたい視線に 泣くことも
 ぼくさえ 生まれなかったら

 

   おかあさん

 私の息子よ ゆるしてね
 わたしのむすこよ ゆるしてね
 このかあさんを ゆるしておくれ
 お前が 脳性マヒと知ったとき
 ああごめんなさいと 泣きました
 いっぱいいっぱい 泣きました
 いつまでたっても 歩けない
 お前を背負って歩くとき
 肩にくいこむ重さより
 「歩きたかろうね」と 母心
 ”重くはない”と聞いている
 あなたの心が せつなくて
 わたしの息子よ ありがとう
 ありがとう 息子よ
 あなたのすがたを見守って
 お母さんは 生きていく
 悲しいまでの がんばりと
 人をいたわるほほえみの
 その笑顔で 生きている
 脳性マヒの わが息子
 そこに あなたがいるかぎり

   康文君

 ありがとう おかあさん
 ありがとう おかあさん
 おかあさんが いるかぎり
 ぼくは生きていくのです
 脳性マヒを 生きていく
 やさしさこそが 大切で
 悲しさこそが 美しい
 そんな 人の生き方を
 教えてくれた おかあさん
 おかあさん
 あなたがそこに いるかぎ

向野 幾世 : 著 : 「おかあさん、ぼくが生まれて ごめんなさい」 : 産経新聞社