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決断が生む多次元宇宙

 あの時の決断は間違っていたのだろうか。生きていくうえで、だれでもが思うことだろう。それは個人の次元でも組織や社会の次元でも、同じで ある。自衛隊のイラク派遣という日本の選択は、この時代に生き、この政権を選択した我々の、一つの決断だ。そして我々はしばしば、あの時、別の決断をして いたらどうなっていただろうと思う。歴史は全く別の道を歩んだかもしれないと考えながら。
 最新の天文学では、いわゆるユニバース(一つの宇宙)ではなく、マルチバース(多次元宇宙)という考え方が主流になりつつある。宇宙は唯一ではなく、進 化の中で多くの宇宙に枝分かれしていくというのだ。そうなると、あらゆるレベルで、決断のたびに選択肢の数だけ無限に宇宙が分枝していくとも考えられる。
 さらに英国の宇宙物理学者スティーブン・ホーキングによれば、我々の宇宙は10次元空間に浮かぶ3次元の膜のようなものであるという。なかなか想像しにくいが、我々はいわば、ぺらぺらの紙のようなものの中に住んでいるらしい。
 この二つの理論が正しいなら、別の選択をした別の膜宇宙が10次元空間に浮いていることになる。そこへ我々の膜宇宙から移動できたととしたら、どうだろう。
 今も奥参事官と井ノ上書記官が活躍している。いや、イラク戦争や9・11も回避でき、貴重な人命が失われずにいる。
 そんな宇宙もあるに違いない。新しい年は英知を集めて、悲しみのない宇宙を選択していきたいと思う。

渡部潤一 : 著 : 「決断が生む多次元宇宙」 : 2004年1月6日朝日新聞統合版 : ゼロヨン時評