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すきとおる二十年の向こうから
何十行 縦書きで 素直に
静かに歩み寄ってくる
元気な字
手作りののりがかおる
一息のきれいな空気が
あの小さな白い町より
はるかに かるい
午後三時
封筒を切る
赤いはさみは
鋭い が
僕はどこかで鈍い

 

        「石が一つ」

図書館に南極の石が一つ
ひらいている
凍結された貨幣であれば
石のバンクに返せば良いのだが

次のページが北極にある
氷でできた書物の一ページであった
溶けるという喜びを知らない

もしそれを再生紙の箱に入れて
君に送ったら
山の奥のすべての石が きっと
目を開くだろう
君は目を閉じて
僕を見るだろう

 

                「ゼロといちの間」

どこまでが西か
どこまでが東か
知らず 僕たちは
草原のどこかにいた

どこからが君か
どこからが僕か
分からず 僕たちは

それぞれのどこかにいた

否 このすべても
覚えず 真白な果実がふたつ
空へ落ちようとしていた

 

栄治出版 : ボヤンヒシグ 著 : ナラン(日本)への置き手紙 「懐情の原形」 より