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星の王子さまより

 「あんたは、いまじゃ、ほかの十万もの男の子と、べつに変わりのない男の子なのさ。だから、おれは、あんたがい なくたっていいんだ。あんたもやっぱり、おれがいなくたっていいんだ。あんたの目から見ると、おれは、十万ものキツネとおんなじなんだ。

だけど、あんた が、おれを飼いならすと、おれたちは、もう、おたがいに、はなれちゃいられなくなるよ。あんたは、おれにとって、この世でたったひとりのひとになるし、お れは、あんたにとって、かけがえのないものになるんだよ・・・・・」とキツネががいいました
           (中略)
 「じぶんのものにしてしまったことでなけりゃ、なんにもわかりゃしないよ。人間ってやつぁ、いまじゃ、もう、なにもわかるひまがないんだ。あきんどの店 で、できあいの品物を買ってるんだがね。友だちを売りものにしているあきんどなんて、ありゃしないんだから、人間のやつ、いまじゃ、友だちなんかもってや しないんだ。」
           (中略)
 「もう一度、バラの花を見にいってごらんよ。あんたの花が、世のなかに一つしかないことがわかるんだから。それから、あんたがおれにさよならをいいに、もう一度、ここにもどってきたら、おれはおみやげに、ひとつ、秘密をおくりものにするよ」
           (中略)
 「じゃ、さよなら」と、王子さまはいいました。
 「さよなら」と、キツネがいいました。「さっきの秘密をいおうかね。なに、なんでもないことだよ。心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目にはみえないんだよ」
 「かんじんなことは、目に見えない」と、王子さまは、忘れないようにくりかえしました。
 「あんたが、あんたのバラの花をとてもたいせつに思ってるのはね、そのバラの花のために、ひまつぶししたからだよ」
 「ぼくが、ぼくのバラの花を、とてもたいせつに思ってるのは・・・・・」と、王子さまは、忘れないようにいいました。
 「人間っていうものは、このたいせつなことを忘れてるんだよ。だけど、あんたは、このことを忘れちゃいけない。めんどうみたあいてには、いつまでも責任があるんだ。まもらなけりゃならないんだよ、バラの花との約束をね・・・・・」と、キツネはいいました。
 「ぼくは、あのバラの花との約束をまもらなけりゃいけない・・・・・」と、王子さまは、忘れないようにくりかえしました。

サン・テグジュペリ : 作 : 「星の王子さま(オリジナル版)」 : 岩波書店