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小さなステップでも踏み出した人の「一歩」の差は大きい

 釣り糸に餌をつけて水の中に投げ込もう。ともかくそこからスタートだ。

 1948年、セオドア・エリオットというエンジニアが、何十年もの間の懸案を解決した。
 ニューヨークとカナダを結ぶ鉄道は、農民や事業家たちの長い間の願いだったが、そのためにはナイアガラ川をまたぐ橋が必要だった。しかし、急流のナイアガラ川には橋脚を使った従来の工事方法は役に立たなかった。

 そこでエリオットは、つり橋という画期的な工法を発明した。川の両岸に幅七メートル、高さ二四メートルの塔を何本も建て、そこからぶらさげたケーブルで橋を支えるというものだった。
 ところが難問にぶちあたった。どこから工事をスタートさせるか?川にボートを浮かべて作業するわけにはいかないし、両岸は岩だらけの絶壁だ。
 だがスタートさえすれば、仕事の半分は終わったも同じということを、エリオット技師は知っていた。

 模索の末、とうとう彼は解決法を見出した。まず片方の岸から向こう岸へケーブルを張る。そのケーブルは三六本のワイアーをよったもので、人間を二人乗せたゴンドラを支える強さがある。そのゴンドラに作業員を乗せ両岸を行ったりきたりして工事を進めるのである。
 彼のアイデアを聞いたある人間が、こうたずねた。
 「でも、そんな太いケーブルをどうやって岸から岸へ渡すのだ?とても重くて投げられやしないよ」

 しばらく考えていたエリオットは、はたと膝を打った。
 「近所の子供たちを集めて凧揚げ(たこあげ)大会を開こう。そこで向こう岸まで凧を飛ばしてロープをくくりつけた者には、10ドルの賞金を出すのだ」
 大会には大勢の子供たちが参加した。当時の子供にとって、優勝賞金の10ドルはかなりの高額だったのである。しかし、凧は岸に着く前に水に落ちてしまい、なかなか成功する者はいなかった。

 だがある日、ホーマー・ウォルシュという十一歳の少年が南風に凧をうまく乗せ、対岸に着陸させるのに成功した。そこで待ちかまえていた少年が凧の紐(ひも)を岸に縛りつけ、ウォルシュ少年はみごとに10ドルを手中に収めた。

 次の日、エリオットはその凧の紐(ひも)をもう少し太いロープにつないで、対岸からその紐を引っ張った。次にそのロープをもっと太いロープにつなぎ、再び向こう岸から引っ張った。それを何度も繰り返しながら、最後には太いケーブルを両岸に張り渡すことができたのである。
 そして、ゴンドラに乗った人夫がケーブルで川を行き来しながら工事は進められた。
 まず、網を打つ!これがスタートだ。最初は小さなステップで十分。家でじっとしてテレビを見ているより、よっぽどましだ!

ロバート・シュラー : 著 : 「いかにして自分の夢を実現するか」 : 三笠書房