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高齢者と筆談 助け励まされ

 JR秋葉原駅のホームで今月中旬、お年寄りの男性が声をかけてきました。手にしたメモ帳に「信濃町駅に行くのは5番線?」と書いてあります。耳が不自由で、話すこともできない様子です。

 私も信濃町駅で待ち合わせだったので、「一緒に行きませんか」とメモで誘うと、「はい」と目で返事。話は車内でも続きます。

 のどの手術に加えて大腸がんを患い、弱気になっていたそうです。10分ほどの筆談でしたが、「心が晴れました」と喜んでくれました。改札口での別れ際、笑顔で手を振ってくれた姿は4年前に亡くなった祖父とよく似ています。私は涙が止まらなくなりました。

 人と人との信頼関係が築きにくいといわれる現代。ちょっとした触れ合いの大切さを教えてくれました。

 家に帰って話すと、母は「おじいちゃんがあなたに伝えたかったことかもしれないわね」と言います。お年寄りに手助けするつもりが、私の方が励まされた思いです。この男性の病気の回復と幸せをお祈りしています。

大西恵 : 著 : 「高齢者と筆談 助け励まされ」 : 読者のページ : 2005年5月22日朝日新聞統合版