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子ども殺し

だれのなかにも子どもがひとり。
ほかの世界からきた子ども。
この世の王たちは、
この子をゆるさない。

大きくなったときの
この子の力をおそれるのだ。
夜陰に乗じて、槍を持ち、
子を殺そうと城を出る。

いずこの王国からきたのかと、
子に問いただす。
そして子がなつかしむときには、
すでに人殺しの手のなかに。

そしてヘロデの学舎(まなびや)では
子は心をいためて、こう学ぶ。
天に故郷(さと)はありませぬ!
こうして子どもはたやすく殺せる。

死が君たちに近づけば、
ああ、愛しのこらよ、こう思え。
子ども殺しがおこるのは、
救世主がいるときだ。

ミヒャエル・エンデ 著 : 「エンデのメモ箱」 : 岩波書店 (田村都志夫 訳)

《この詩は新約聖書(マタイ伝)の中で、イエス・キリストの誕生をユダヤの王の誕生と聞いた当時のユダヤの王ヘロデが、自分の地位が脅かされると思って、2歳以下の男の子を全員殺害したという記事に基づいて書かれている。大人になるにしたがって、子どもの時の純真な心や、想像力が失われることも関係づけられている。