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ばあちゃんの手を引く若者

 前方の信号が赤に変わった。車をとめた私の目の前を、長身の若者がゆっくりと歩いていく。金髪、ピアスの今時の男の子。
 あっと驚いてしまった。何と、右手で背中の曲がったおばあちゃんの手をしっかり握りしめていた。長い足がもつれそうになりながらも、よちよち歩くおばあちゃんの歩幅に合わせてゆっくり歩いている。

 左手にはスーパーの袋。うっすら透けて見えるのはジャガイモとミカン。そっか。重い物はオレに任せろだね。

 信号が青になるまで、私はその二人の姿をずっと見つめていた。左手を若者に預け、右手につえをついて歩くおばあちゃん。きっとこの子を大切に育ててきたんだね。
 ステキな女の子を連れて歩く若者もいいけれど、背中の曲がったバアチャンを連れて歩いている若者は、その何十倍もカッコいいってつくづく思ったよ。

 涙目になっちゃって、その後運転するにも困っちゃったけどね。

黒崎美穂 : 著 : 「ばあちゃんの手を引く若者」 : 「愛に抱かれて」 : 朝日新聞社