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男が持ちうる最高の妻へ

     1956年11月--バミューダにて

 ハニー、もしかしてぼくが不意打ちみたいな感じでこの世を去ることになったら、言えずに終わってしまうかもしれない二、三のことを書き残しておきたくて、この手紙を書いている。飛行機乗りという仕事はいつなんどき突然、とんでもない不運に見舞われて、ある朝目覚めたら死んでいたということにならないともかぎらない。

 こんなものを書くなんて、またいつものセンチメンタルなおばか加減をさらすだけだとわかっているけれど、こういうことに対するぼくの思いをはっきり知らせておけたら、いざというとき、少しはきみの慰めになるかもしれないから。

 まず最初に、ひとつの事実を直視しよう。人はだれでも死を迎える。人生というものを十分に享受できないまま不運にも死を迎えてしまった赤ちゃんや子供やその他の人々について、考えてみて。それから、ぼくがこの人生で享受してきたすべてのものについても。

 たとえこの手紙を書いた翌日に死ぬとしても、それでも、ぼくはこの世でもっとも幸運な人間のひとりだと宣言するし、きみもそれが事実なことはよく知っているよね。ぼくにはこの手紙書きのように、まだまだやりたいことがいっぱいあるけれど、でも、いままでに天から与えられた恵みの数を勘定してみたら、もうすでに十分生きたってことがわかる。そう思ってみると、、ぼくはたしかにやりたかったことをほとんどすべてやり、見たかったものをほとんど見てきた。当然、うちの坊やたちが大きくなっていくのだって、そばで見ていたいよ。でも、きみとぼくは子育てについてはよくよく意見が合っているから、坊やたちはきっといい子に育つはずだ。それは確信している。それに、ぼくはたっぷりの笑いもきみと共有した。だれの人生を満たすのにも十分な量の笑いだった。

 ぼくとの思い出にひたって、再婚を拒むなんてよしてね。もしも、きみの夫にぴったりな人と出くわしたのなら。そんな人、そうはいないと思うけど。でも、きみはすごく素敵な妻でお母さんだから、未亡人として人生を棒にふるのはもったいない。人生は生きるためのものさ(どこかで聞いた言葉でごめん)。

 だからほら、にっこり笑って、口紅をさして、新しい服を着て、きみが新しい人生を築くためにどれだけのことをやれるか、ぼくに見せて。そしてたまに、ぼくのことも思い出して。たまにだけ。でないと、きみの人生を縛ってしまうことになる、わかっているよね。思い出してもらえるかぎり、ぼくは本当は死んでしまわない。ぼくはずっと、かわいいジョンやビル、アル、ダンのなかで生きつづける。死後の”永遠の世”っていうのは、そういうことだと思うんだ。

                              いつだって愛してるよ

                                        ジャックより

エマ・スウィーニー : 著 : 「いつだって愛してる」 : 主婦の友社