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どうしておとなはそんなにじぶんの子どものころをすっかり忘れることができるのでしょう?そして、子どもは時にはずいぶん悲しく不幸になるも のだということが、どうして全然わからなくなってしまうのでしょう?(この機会に私はみなさんに心の底からお願いします。みなさんの子どものころをけっし て忘れないように!と。それを約束してくれますか、ちかって?)

 この人生では、なんでかなしむかということはけっして問題ではなく、どんなに悲しむかということだけが問題です。

子どもの涙はけっしておと なの涙より小さいものではなく、おとなの涙より重いことだって、めずらしくありません。誤解しないで下さい、みなさん!私はただ、つらい時でも、正直でな ければならないというのです。骨のずいまで正直で。

 人生の真剣さというものは、お金のために働くようになってからはじまるというものではありません。そこではじまり、それでおわるものでもあ りません。

こんなわかりきったことを、みなさんが大げさに考えるようにと思って、私はことさらとりたてていうのではありません。また、みなさんをおどすた めにいうのでもありません。いや、いや、みなさんはできるだけ幸福になってください!愉快にやって、小さいおなかがいたくなるほど笑ってください!

 ただ、何ごともごまかしてはいけません。またごまかされてはなりません。不運にあっても、それをまともに見つめるようにしてください。何かうまくいかないことがあっても、恐れてはいけません。不幸な目にあっても、気をおとしてはいけません。元気を出しなさい!

 かしこさのともなわない勇気は、不法です。勇気のともなわないかしこさは、くだらんものです!世界史には、ばかな人々が勇ましかったり、かしこい人々が臆病」だったりした時が、いくらもあります。それは正しいことではありませんでした。

 勇気のある人々がかしこく、かしこい人々が勇気をもった時、はじめて人類の進歩は確かなものになりましょう。

エーリヒ・ケストナー 著 「飛ぶ教室〜第二のまえがき」より : 岩波世界児童文学集