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私の魂は怯懦(きょうだ)ではない

 私の魂は怯懦(きょうだ)ではない、
 この世に吹きすさぶ嵐に戦(おのの)くような、そんな魂ではない。
 私には、天の栄光の輝きと、それに劣らぬ人の信仰の輝きが、
 はっきり見えている、-----私にはなんの不安もない。

 私は今汝に呼びかける、・・・・わが胸の衷(うち)なる神よ、全能にして
 永遠に存在する者よ、生命よ、わが衷に宿る者よ、------
   私が----不滅の生命たる私が----汝によりて強きごとく、
 わが衷にありて強き者よ、と。

 世の中には、人心を惑わす夥(おびただ)しい信条があるが、
 その空しさときたら、言語道断という他はない。
 枯れ果てた雑草というか、果てしない大海原に
 浮かぶ泡沫(うたかた)というか・・・・・全く無意味という他はない。

 わが衷なる神よ、汝の無限の力を固く信ずる者に、汝の
 永遠の生命をもつ、微動だにせぬ巌に確乎たる碇(いかり)を
 おろしている者に、そのような空しい信条が、
 いささかでも懐疑の念をもたらすはずは全くないのだ。

 汝の霊は、すべてを抱擁する大きな愛をもって、
 悠々たる永遠の歳月に生命を与え、
 天地に充満し、上より覆い、変化を与え、
 保持し、亡ぼし、創造し、育成してゆく。

 地と人とは過ぎ去るかもしれない、
 日月星辰も宇宙も姿を消すかもしれない、
 だが、汝さえ後に残るならば、
 すべての存在は汝により存在し続けるはずだ。

 そこには死を容れる余地はない、
 死の力が破壊しうるものはひとかけらもない。
 おお、わが衷なる神よ、汝はまさに「在るもの」、まさに「命」、
 汝の本質が永久に滅びざらんことを!

平井正穂 : 編 : イギリス名詩選 : 岩波文庫