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コルチャック先生

「君たちの旅立ちにさいして、いまここに別れを告げなければなりません。長い、長い、旅路への。

 この旅には人生という名がつけられています。私たちは、何度も何度も考えてみました。君たちにどのような助言を与えるか、どのように別れを告げるべきか。

 残念ながらその言葉は貧しく、ひ弱です。私たちは君たちに、何も与えることはできません。
 私たちは君たちに、神を与えることはできません。神は君たち一人ひとりが、自分の魂の中に、探し求めるよう努めなければならないからです。

 私たちは君たちに、人間の愛というものを与えることは出来ません。人間の愛は寛大さなくしてはありえません。許すということは、容易なことではありません。君たちは、自分自身で、寛大であるよう努めなければならないのです。

 しかし、私たちは君たちに”一つ”だけ与えることができます。
 より良き人生への、まことの、正しい人生への----今日ではありえない----”あこがれ”を贈ることができます。

 おそらく、その”あこがれ”が君たちを、神へ、祖国へ、愛へと導くでしょう。
 このことを忘れないように。さようなら」

岩波ジュニア新書 : 近藤 康子 著 : 「コルチャック先生」

 

 ヤシュヌ・コルチャックはポーランド系ユダヤ人で、医師であり教育者でもありました。彼は第二次世界大戦中に、ユダヤ人の孤児院を運営していたの ですが、ポーランドを占領していたナチス・ドイツにより、孤児たちが強制収容所に送還される時、自分一人だけは許されたのに、子どもたちと運命を共にすべ くトレブリンカの強制収容所に旅立ち、子どもたちと一緒に処刑されました。

 コルチャック先生の 残した「子どもの権利の尊重」の思想は、第二次世界大戦後に1959年に「子どもの権利宣言」、さらに1989年に国連で「子どもの権利条約」の採択へと繋がっていったのです。