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子供を育てたこと自体が

 あなたの苦しみは、もしそれになんらかの意味 があるとしたら、それはあなた御自身の不幸に関わっているのですか、それとも亡くなった方に関わっているのですか?息子を失ったことであなたの心を動かし ているのは、彼から何の喜びも受けなかったということですか、それとも、もし彼がもっと長く生きていたら、彼からもっと大きな喜びをえられたろうにという ことですか?もしあなたが彼から何の喜びも得ていないと言われるなら、あなたは失ったことをもっと楽に堪えられたでしょう。

なぜといって人間は、自分が何 の喜びも楽しみも感じないものを慕ったりしないからです。
 しかし、もしあなたが大きな喜びを得ていたとお認めになるなら、それが奪いとられたことをあなたは嘆くべきではなく、すでにそれを得ていることを感謝しなければなりません。なぜなら、息子を育てること自体が、あなたの御苦労に対する大変な報酬だからです。
    (途中省略)

 仮に彼の熱心な勉強ぶりがあなたに何ももたらさず、彼の誠実さが目につかず、彼の賢さがあなたに何も語りかけなかったとしても----あなたが彼を息子に持ったこと、彼を愛したこと、まさにそのこと自体が報酬なのです。
                 「マルキアへの慰め」12より

中野孝次 : 著 : 「ローマ人の哲人 セネカの言葉」 : 岩波書店