いつの日かわれ去り逝くとき、
わがもとをば去りたもうな。
われ死に面するとき、
汝 立ち出でてわが盾となりたまえ!
恐怖と不安の闇
わが心を囲み閉ざさんとするとき、
われをばこの怖しき淵より引き出し給え!
汝のこうむりし不安と責苦のゆえもて。
(マタイ受難曲第62曲コラールより)
われら涙流しつつひざまずき、
御墓なる汝の上に願いまつる----
憩いたまえやすらかに、
安らかに憩いたまえ!
安らい給え、苦しみぬきし
御肢体よ!
御身を納めし墓と墓石こそ
わが悩める良心の
うれしき安息の枕、
また魂の安けき逃れ場にててあれば。
かくてこの目はこよなく満ち足りてまどわん。
憩いたまえ安らかに、
安らかに憩いたまえ!
憩いたまえ安けく、
こころより憩いたまえ!
憩いたまえ安けく、
安けく憩いたまえ!
(マタイ受難曲第68曲終曲合唱より)
音楽之友社 : 杉山 好 著 : 「聖書の音楽家バッハ」 より
J.S.バッハの音楽は、それ自体が「祈り」になっています。バッハは特別の書簡を残していませんが、その「祈り」の最も崇高な作品の一つが「マタイ受難曲」です。
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